米国際貿易委員会(ITC)は7日、携帯電話向け半導体大手の米クアルコム製の半導体チップが家電・通信向け半導体大手の米ブロードコムが保有する特許を侵害していることを理由として、同チップが使用された携帯電話の輸入を禁止する決定を下した。
今回の輸入禁止措置は、既に輸入が行われている機種に対しては適用されない。しかし、投資銀行スティフェル・ニコラウスのアナリストであるRebecca Arbogast氏によると、「クアルコムと、同社の顧客キャリアにとっては悪いニュース」。携帯電話の端末は短期間で新機種が開発されるため、現行機種への適用除外はごく限られた期間だけで終わると同氏は指摘する。
アメリカン・テクノロジー・リサーチのアナリストであるMark McKechnie氏は、クアルコムはブロードコムの特許に抵触しない技術を早期に手にする必要があると述べている。今回の輸入禁止措置によって、7月にアジア、その他の地域で今年後半に予定されていたモトローラの「Razr 2」などの新機種の導入が遅れる可能性がある。また、新しい技術に乗り換えるためのコストが転嫁されることで、利用者が料金増加の負担を強いられる可能性もある。
今回の決定は、高速のデータ・ネットワーク接続にクアルコムのチップを利用していたベライゾン・ワイヤレス、スプリント・ネクステル、AT&Tなどのサービス・プロバイダーにとっても打撃となる。例えば、ベライゾンの携帯電話機の80%はクアルコムの技術を使用している。
クアルコムのPaul Jacobs最高経営責任者(CEO)は、輸入禁止措置によって数千万台の携帯電話機の輸入が妨げられると述べた。同社は裁判所に対して直ちに禁止措置の停止を求め、ブッシュ大統領に対して裁定への拒否権発動を求めるという。同社ジェネラル・カウンセルのLou Lupin氏によると、60日間は米政府が拒否権を発動することができる。
ブロードコムの広報担当であるBill Blanning氏は、ITCの裁定を歓迎し、同社はクアルコムとのライセンス契約締結を目指すとした。同氏は「われわれは、当社の知的財産権の使用に対して適切な補償を望んでいるだけだ」と述べた。
禁止措置によってどれほどの経済的損失の影響があるのかは定かではないが、JPモルガン・セキュリティ−ズのアナリストであるEhud Gelblum氏の先月の試算によると、最大で8千万台の携帯電話機に影響が及び、10月1日から始まるクアルコムの次会計年度の売上高に16億ドルの損失が発生するという。
ブロードコムの特許は、携帯電話機が圏外にある時にバッテリーの消費を節減する技術に関わるもの。ITCの決定は、禁止措置の対象をブロードコムが求めていたように、クアルコムのチップを搭載するすべての携帯電話機とするか、あるいは電話機に組み込まれていないチップのみを対象とするかという二論の間の妥協案と言えるもの。
ITCは、クアルコムのチップを搭載するすべての携帯電話機に対して直ちに禁止措置を取ることは携帯電話のメーカーと通信事業者に「多大な負担を課す」ことになるとしている。しかし、大半のチップは携帯電話に組み込まれた状態で輸入されるため、チップのみを輸入禁止の対象とすることは「特許保持者のブロードコムにとってはほとんど、あるいは全く救済にならない」と述べている。
クアルコムとブロードコムは今回争点となっている特許以外にも多数の特許に関して法廷闘争を行っている。